朝食の席は、不自然に静かだった。
食器と食器の触れ合う音と、外のざわめきだけが響いている。
祭りに行く準備をしなくてはならないので急いで食べていたというのもあるのだが、
クラピカは赤面して俯いたまま、ゴンはそんなクラピカに見惚れたまま、
キルアはそんなゴンを面白がって見ていて、
ミトは恥ずかしそうに肩を竦めているクラピカを、満足そうに眺めていた。
ゴンの祖母はというと、そんな四人の様子には全く気付かず、
いつもどおり静かに食事をとっているだけであった。
しかし、ついにクラピカが耐えかねて、かちゃり、と食器を置き、言った。
「ゴン…あ、あまりじろじろ見るな。可笑しいのは私だって分かっている」
ゴンは真っ赤になって、食器を取り落とした。そんなゴンをミトが叱る。
堪えきれず、キルアが噴き出した。
「キルア!何も笑うことはないだろう!」
クラピカは、自分が笑われたのだと勘違いしたらしい、
そう、まだ肩を震わせているキルアを叱り付ける。
しかし、それが彼の笑いに拍車をかけた。
「キルア!」
「ち、ちが、だってゴンがさ、くくく…」
「キルア!!」
ゴンも一緒になって、キルアを怒鳴った。
思わず、ゴンとクラピカは目を見合わす。
クラピカの肌は、窓から差し込む日の光に、本当に透けそうなほど白かった。
瞼にさしたパールのアイシャドウで、
彼女の目が水っぽく潤んで見え、ゴンはまたどきりとした。
慌てて目を逸らし、ごにょごにょと口を動かす。
「お、可笑しいと思ったから笑ったんじゃないよ…あんまり綺麗だからさ。
ザックが…驚くだろうなと思って」
ゴンの言葉に、クラピカはさらに顔を赤くする。
そして、力が抜けたように、首をかくんとさせ、俯いた。
「そうだ…この格好で会うなんて。やっぱり耐えられない、ミトさん、やはり着替えさせて」
「だーめよっ。あの服は今日が終わるまで、私が預かっておきますからね!」
ミトはついとそっぽを向き、唇を尖らす。
キルアは思わず口を挟んだ。
「やっぱ今日はザックと過ごすの?約束してんだ?」
「え?ああ…」
クラピカは赤面を誤魔化すように、曖昧に頷いた。
ゴンは無理に笑って、言う。
「だったら尚更だよ!クラピカは普段から綺麗だけど、
いつもと違うクラピカを見られたらザックもきっと喜ぶよ!」
「そうよゴン、よく言ったわ。普段お化粧をしない子がデートのときだけしてきたら、
どんなに普段から綺麗な子でも、男の子はそのギャップにぐっとくるのよ!」
ミトとゴンは、さすが親子(実の、ではないが)といったふうなタッグで、クラピカを言い包める。
クラピカは最初こそ戸惑ったような様子だったが、二人の猛烈な誉め言葉に、
徐々に自信を持ち始めたらしい、二人が話し終える頃には、曖昧ながら笑顔になっていた。
そんな三人を見て、キルアだけは重い溜息をついていた。
―――どうして、こういう時だけ、平気でそういうことが言えるんだよ。
あんまり綺麗だから、か。
ザックのことが絡んでなきゃ、そんな一言を言うのも躊躇っちまうのは、どうしてなんだろう。
俺も本当に恋をすれば、そういう心と行動の矛盾に気付くことができるんだろうか。
それとも、クラピカの恋路を見守りたいと思うと同時に、
ゴンの恋も実って欲しいと願うことが、そもそも矛盾しているのだろうか。
港に下りると、ゴンとキルアは、クラピカに手を振って別れを告げた。
クラピカはこの先で、ザックと待ち合わせているらしい。今日は一日別行動だ。
クラピカが背中を見せると、ゴンはふと、寂しげな面持ちになった。
それはキルアも同じだった。はあ、とあからさまに溜息をつき、
隣のゴンを責めるように睨み付ける。
「…いいのかよ。ザックのところに行かせちまって」
「…俺は、クラピカに辛い思いをさせたいわけじゃないから」
ゴンはそう、眉根を寄せて自嘲のこもった笑みを見せながら、言った。
ザックと会えないのが辛いのなら、二人の仲を邪魔することはできない。
クラピカが辛い恋をしているというのなら別だけれど、そういうわけではないから。
「大切に思える人ができるっていうのは凄くいいことだし、
ほんの一瞬でもクラピカが復讐とかに囚われない時間をその人と作れるなら、
俺はそのほうがいいと思うんだ」
「そういうもんかね」
キルアは、やれやれ、と肩を竦める。
よく、本当にいい男なら愛する女の幸せを願えとか言うけれど。
これで本当に、クラピカのことに諦めがつくのなら、それでも良いとは思うが。
キルアが何か言葉をかけようとしたとき、
ゴンは急に強い表情になり、きっとどこか遠くを見据えた。
「ダニエラたちも、見てるはずだよ、あのクラピカとザックのこと。
あれを見てもまだ、クラピカのことをあの程度の女なんて言うようなら」
「ただの嫉妬の塊だよな」
成程、それが一番の狙いか。
キルアは納得し、にやりと不敵に笑んで見せて、ゴンの言葉を繋いだ。
きっとあの女たち、面食らうに違いない。
あの高飛車な鼻の折られるのを見るのが楽しみだ。
どうして…
二人は様々な出店を回り、見世物小屋に入ってみたり、
時折知り合いの店を手伝ったりしながら、祭りを満喫した。
しかし、たまに夜のダンスのことを思い出しては、複雑な気持ちになるのだった。
「つーか俺ら、パートナー見つけてないじゃん…
もしかして、こんなことしてる場合じゃないのかも…」
キルアは盛大な溜息と共にそう言い、串に刺さったパインを齧った。
豊潤な甘みのある果汁が喉を潤すと同時に、酸味が舌をひりひりさせた。
ゴンは苦笑して、りんごから口を離した。
「まあまあ、ダンスは強制参加じゃないからさ。
上手いこときっちり男女一組になれるわけがないんだから」
「けど、つまりペアを組めなかった連中は、あぶれ者ってことだろ?」
「まあ、そう…なんだけど」
キルアは喉を、かーっと鳴らした。
「あぶれ者?この俺が?納得いかねー、ダンスのときには俺、おまえんちに帰ってるからな!」
「えーっ、そんなの勿体無いよ、花火が見ものなのに!
それに結構、直前にすぐ近くにいる子とペアになれることも多いからさ」
「俺がババアに取り囲まれてた場合はどうなるんだよ!
そんでチークダンスを求められたらどうすんだよ!おえっ」
そう吐き捨てるように言うと同時に、口の中に残ったパインの固い部分を吐き出した。
ゴンは苦笑しながら、ふと、視界の端を青い影が掠めるのを感じた。
はっとして、反射的に顔を上げる。
いつの間にか、青い衣装を纏った人を振り返る癖がついてしまっていた。
奇しくも、ミトがクラピカに貸し与えた服は、白と青のストライプのワンピース。
ゴンの勘は正しく、視界の端にうつっていたのは、やはりクラピカだった。
クラピカは笑っていた。
その笑顔を向けられている相手は、丁度出店の影になっていて見えなかったが、
そんなことは推し量って考えるようなことでもなく。
自分らでさえ見たことが無い笑顔。
好きな異性にだけ女性が見せる、春に開く花の色のような。
―――ダニエラも、どこかから、見てるのだろうか。俺と同じような気持ちで、ザックを。
「行こうぜ」
ゴンの目を捉えているものに気付いたらしい、
キルアはそんなゴンの腕を掴むと、ぐいと引っ張って歩き出した。
ザックとクラピカが見ていた出店は、異国風のアクセサリーを売っている店だった。
色鮮やかなビーズで作られた大ぶりのピアスや、小さな宝石をあしらった指輪。
金属を細かく削った繊細な作りのバングルや、長いネックレス。
着飾るための装飾品を身につけることはなかったが、
それらのアクセサリーはクルタの技工士たちの作っていた、
里縁の品に似ていて、クラピカの目を引いた。
ただ懐かしく思って眺めていただけなのに、隣にいたザックは嬉しそうに笑って、言うのだった。
「気に入ったものがあれば買ってあげるよ」
クラピカは慌てて、ぱっと顔を上げる。
物欲しそうな顔をしていたつもりはなかったが。頬が染まる。
「…いや、そんなつもりで見ていたのでは」
「やあお兄さん、恋人にプレゼントするのなら、やっぱり指輪がおススメだよ!
特にこの宝石が填まっている指輪はね、それぞれ指輪の裏にメッセージが彫られているんだ」
言下に店主の男はそう捲くし立てるように言い、
様々な美しい指輪を並べたトレイを手に取り、ずいと二人の前に差し出した。
戸惑ったように、受け取りかねているクラピカの隣で、ザックはそれを笑顔で受け取った。
「どれがいい?遠慮することはないよ」
「………」
それでもクラピカは、指輪を手にとって見ようとはしない。
ザックはそんなクラピカをよそに、一つずつその華奢な指輪を手に取り、しげしげと眺めた。
「…?うーん、この指輪の裏に彫られてるっていうメッセージは、共通語じゃないね。
何て書いてあるのかわからないや」
「…どうか」
クラピカが、ぽつりと呟くように言った。
「愛するあなたが幸福でありますように」
驚いたように、ザックはクラピカを振り返った。店主も驚いている。
「それはルクソ地方に伝わる古代語だよ。まさか解読してしまう方がいるとは、驚きだなぁ。
いや、こんなお客さんは初めてだ。あんたらだったら特別に値引きしちゃうよ」
そう言い、店主はウインクしてみせた。
クラピカとザックはきょとんとして、顔を見合わせた。
ザックはそんなクラピカを見て、にこりと笑う。
「だってさ。買うしかないでしょ」
「だが…そんな事をしてもらうわけには」
クラピカは、懐かしさに煽られてつい指輪の裏を読んでしまったことを後悔した。
ザックはなかなか素直にならないクラピカに思わず苦笑したが、
手にしていた指輪をもう一度眺め、言った。
「愛するあなたが幸福でありますように、か」
光にかざすと、環の装飾の先端の、薄い水色の宝石が輝いた。
「…いつもつけているルビーの耳飾りも素敵だけど、
こういう淡い色のものもきっと似合うよ。今日のワンピースにぴったりだ」
ザックは、まだ俯いているクラピカにそう言って、ポケットから財布を取り出した。
「これください」
まいどあり、と、明るい声が背中で響いた。
クラピカは、右手の薬指に填まった指輪を、まだ不思議そうに眺めていた。
「…ありがとう、ザック」
心ここにあらずといったふうに、そう礼を言うクラピカに、ザックは満足そうに微笑んだ。
彼女の反応からすると、どうやら指輪をプレゼントされるのは初めてのことらしい。
ザックは歩きながら、尋ねた。
「クラピカは何月生まれなんだい?」
「…四月だが」
「ワオ、誕生石はダイヤモンドってわけだね。君にふさわしい。
誓いの石だ。素敵だね」
そう言い、指輪に心を奪われているクラピカの頭をそっと撫でた。
クラピカは、びくりと過剰に反応し、ザックを見上げた。
色づいた唇にザックは一瞬目を奪われたが、かぶりを振り、心を落ち着けると、
彼女の頬に手を添えて、言った。
「いつかきっと、ダイヤをプレゼントできるような男になるよ」
クラピカの瞳が揺らいだ。
戸惑いのようにも見えた。感激の涙に潤んだのかもしれない。
クラピカは頬紅と血の色で染まった頬を伏せ、
きらめく瞼を伏せ、そして、躊躇いがちに微笑んだ。
「キルア、もう大丈夫だから。離してよ」
ゴンが困ったようにそう言うと、キルアはようやくその手首を開放した。
港の喧騒からは大分離れた、草花に囲まれた場所まで来ていた。
時折、蝶が二人の間を、逃げるようにすり抜けていった。
キルアは、きっとゴンを見据えて、言った。
「おまえ、クラピカのことどうすんだよ」
「え」
どうする、って。
キルアは苛立ったように、大きくかぶりを振って、声を荒げた。
「だから!諦めんのか、頑張んのか、だよ!
クラピカが復讐とかに囚われない時間をその人と作れるなら、
なんて殊勝なこと言ってたけどよ、さっきのおまえの顔酷かったぜ。
とてもこんなんでクラピカの恋路を見守れるとは思えねーけどな!
おまえがそのへんハッキリさせてくんねーと、
俺もどう出りゃいーのかわかんねーんだってば!」
諦める。
その言葉は、ぐさり、と深くゴンの心臓を抉った。
しかしキルアの言葉も最もで、ゴン自身、自分の心の矛盾に戸惑っていた。
ゴンは俯き、ぼそぼそと小声で話し始める。
「それは…俺もどうしたいのか、分からないっていうか」
「ああん?!」
キルアは、聞こえない、とでもいうように、ぐいと耳をゴンのほうへ向けた。
ゴンは唇を噛み締めた。
「だって…そりゃ、クラピカには幸せになってほしいもん。
好きになった人と両思いなら、その人と上手く行って欲しいと思うし、
クラピカが幸せそうに笑ってるのを見られるのは、
俺だって嬉しい…ていうか、嬉しいんだと思いたいよ。
でも…どうして俺じゃないんだろうって思っちゃうんだよ。どうしてザックなんだよって。
だって俺のほうがずっと前からクラピカのこと好きだったのに、って」
「…けどおまえ、クラピカに辛い思いをさせたいわけじゃないから、って言ったからにはさ」
キルアは言いながら思った。
分かってる。そういう問題じゃないってことくらい。
気持ちに整理がつかなくて、一番辛い思いをしているのはゴンのはずだ。
案の定、ゴンは悔しさをその大きな目に湛えて、キルアを鋭く睨み付けた。
キルアは怯むでもなく、ただ、やり場の無い寂しさと悲しさを持て余していた。
「分かってるよ…そんなこと」
ゴンの声は震えていた。
「クラピカのことはもう諦めたほうがいいって、
そうすればそのうち辛かったことも忘れられるって、
分かってるのにじゃあ今すぐ諦められるかって言ったらそんなの無理だし、
クラピカを見ればやっぱり大好きだって思っちゃうし、
でもザックといるところを見るとすごいムカムカするし、
応援してあげられればいいのに、そんな昨日の今日で諦められるわけないじゃん。
分からないよ…まだ恋愛をしたことがないキルアには、こんな気持ち…分かるわけないよ」
今にも泣き出しそうな、ゴンの声。
キルアの胸は、その声に共鳴しているかのように痛んだが、
ここで彼の悲しみに同調したところで、何か解決になるわけでもないことは分かっていた。
唇を噛み締め、その痛みをやり過ごすと、次の瞬間にはもう、
つり上がった目尻を更に怒りにつり上げていた。
「…あーそうかよ。おまえがそんな意気地なしとは思わなかったぜ」
キルアはそう言い、踵を返した。
「…おまえみたいな腑抜けヤローのためにクラピカのことを諦めた俺は、なんだったんだよ」
ゴンははっとして、顔を上げた。
キルアは挑むように、こちらをねめつけていた。
「ゴンがそういうつもりなら、俺がクラピカをザックから奪い取ってやる!」
そう怒鳴って、キルアは全力で走り出した。
弾かれたように、ゴンはそんなキルアを全力で追いかけた。
―――速い。やっぱり、本気を出したキルアには、追いつけない。
クラピカとザックの居た港は、いつの間にか過ぎてしまっていたようだ。
すれ違う人々は、二人のあまりの速さに、何が起こったのかすら分かっていない。
ゴンの額に汗が滲み始めていた。一体俺は何やってるんだ。
まさか、キルアもクラピカを好きだったなんて。
もし、同じ人を好きになってしまった時は、真っ向勝負するって、
それが友情ってもんだって、言っていたのに。
ゴンは、ぐっと眉根を寄せた。
ふざけるなよ。黙ってたなんて、酷いじゃないか。嘘をついてたなんて、酷いじゃないか。
自分だけ勝手に諦めて、一人で勝手にこんな辛い思いをしていただなんて、酷いじゃないか。
それに、キルアが本気になったら。
走る速さでも、恋愛でも。勝てる気がしない。それでも。
「ふっ…ざけるなァー!!誰が渡すかああぁっ!!」
ゴンがそう、力の限り叫ぶと、急に、先を行くキルアが足を止めた。
ゴンの目が点になる。
「…えっ?うわわっ!」
慌てて急ブレーキをかけたが、咄嗟のことだったので、足がもつれる。
そんなゴンをキルアは慌てて受け止めたが、水面に石を走らせたように、
二人の身体はもつれ合って、跳んでいった。
疲労と、今の衝撃の眩暈が、二人をおそった。
「………ごめん」
「……いや、どってことねーけど、これくらい」
目を回しているゴンを呆れ気味になって見ながら、キルアは溜息をついた。
そして、ゴンの頭の中がはっきりしてきた頃を見計らって、にっと笑って言った。
「やっぱり無理なんじゃねーかよ、諦めるなんて」
悪戯っぽく言うキルアの言葉に、うん、とゴンは顔を顰めて、慌てて起き上がった。
意味深ににやにやしているキルアに、ゴンはみるみる顔が青ざめていくのを感じた。
「まさか……キルア、さっきのは」
「嘘にきまってんじゃーん!おまえってホントーにお人好しなー」
言いながらキルアは、よっこいしょ、と身体を起こした。
すると、すぐさまゴンに腕で首を締められる。
ぐっ、と、キルアの喉から引き絞られた声が漏れた。
「ちょっ、ゴ、ゴン、タンマ、俺今猛烈に走った後で多少息があがって、ゲッホ」
「なんだよなんだよ、お人好しって!俺は知らない間にキルアにすげー酷いことしてたんだって、
ちょっと泣きそうになったんだぞ!それが、う、嘘に決まってるだってえ?!」
「がっ…だって、おま、こーでもしないと自分の本当の気持ちにすら気付けねえんじゃんかよ!」
キルアはそう言って、なんとかゴンの腕を振りほどいた。
そして、自身の首を、労わるように撫でながら、言う。
「…渡すもんか、って、あれがおまえの本音だろ?
俺にすら渡したくねえって思うんなら、昨日今日出会った男なんてもってのほかだろ」
「………」
「自分のもんでもねーのに、渡すもんかなんて言えないって思ってたんだろ。
けどそんなの綺麗事でさ。本気で好きなら誰にも渡したくないって思うのは当然だろ。
ザックといるときのクラピカは確かに幸せそうだけどさ、ゴン、お前気付いてないみたいだけど」
言いながら、キルアは立ち上がった。
「おまえといる時のクラピカも、おなじ顔してんだぜ」
キルアは、やれやれと肩を竦めながら、あたりを見渡した。
そして、盛大に溜息をつく。
「一体どんだけ走ったんだ?港があんなにちっちぇー」
「…キルア」
「んー?」
キルアは間延びした声で、そう答えた。
ゴンは少し言葉を詰まらせ、首を横に振った。
「…ありがと」
「いいえ、どういたしまして。
おまえの世話がやけんのは今に始まったことじゃねーし、気にしてねーよ」
行こうぜ、日が暮れちまう。
キルアはそう言って、丘を下りはじめた。
鼻歌を歌っているキルアの背中を見ながら、ゴンは思った。
―――さっきの。本当に、嘘だったのかな。
考えようとして、ゴンはやめた。
本人曰く、何を考えているか分からない子、というのは、彼のチャームポイントらしいから。
to be continues.
20081011
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