愛のメモリアルノート




キルアとゴンの二人と別れた後、仲良く飛行船に乗り遅れた。


「ひっ…じょうに、不本意ではあるがな」

「ため長すぎだろ。そんなに嫌かよ」

「当たり前だ」


突っぱねるようにそう言い放つクラピカに、レオリオはやれやれと肩を竦めたが、
ここであんまり素直にされても、単なる俗呆けなのか、
それても慣れているのか、と疑いたくなってしまう。
クラピカらしいといえばらしいのだが、お互いに想い合っているのを知っている関係のわりには、
彼女の態度は、些か冷たすぎるというもの。

まあ、それも自分の犯したミスを思えば、仕方ないのかもしれないが。
しかし、彼女だって本当は、この事態を少なからず、有難く思っているはず。
というか…確信犯?


「まさか、飛行船の時間を間違えてたとは思わなかったんだもんよ」

「だからって、そのごたごたに私まで巻き込んで欲しくなかったものだな」

「んなっ、自分から進んで俺の乗る飛行船の次の便を調べてくれたんだろーがっ」

「感謝されてるのか憎まれ口を叩かれているのかわからんな」

「両方だよっ、りょーほー!」


レオリオは舌を出しながら、部屋のドアをあけた。
精算機がの画面が青く光り、いらっしゃいませ、と機械的な声でアナウンスを始める。
クラピカはいまいましそうに、その画面をにらみつけた。


「だからって、何故おまえとこんな、いかがわしいホテルに…」

「ビジホは狭くてかなわねーよ、ラブホなら二人で泊まっても料金大して変わらねーわりに、
 風呂も部屋もベッドも広いし、サービスもいいし、
 レストランメニューも綺麗なとこならなかなかイケルし」

「ほう、随分と詳しいんだな」


低く凄んだ声に、レオリオは、しまった、と口を噤んだ。


「私は別にビジネスホテルでも十分事足りたんだが」

「なんだよ、折角気を利かせてやったのによ、そんなこだわる事か?
 別にもう、友達以上恋人未満ってんでもないだろーが」


早速、スーツの上着を脱いで、ネクタイを緩めているレオリオに、
クラピカは顔を真っ赤にして、怒鳴りつけた。


「いっ、いいか?!変な真似をしたら、ただじゃおかないぞ!」


レオリオは、口を突き出して、頼まれてもそんな貧乳にはたつものたちません、と言い、
その直後に、顔面に枕が飛んできた。


「風呂には私が先に入る」


クラピカは、凄まじい速さで枕を投げつけられたレオリオがどうなったか確認もせず、
脱衣所へと入っていった。
顔を見せずに、覗いたら貴様だけ野宿だ、と有無を言わさぬ声色で言う。


「…はい…」


レオリオは情けない声でそう答え、ずるずるとその場にしゃがみ込んだ。
枕をぶつけられて痛いと感じたのは初めてだ、と思いながら、ひりひりする顔面をさすっていると、
ふと、視界の端に、何か冊子らしきものがうつった。


「おっ、これは…」


手に取り、ぱらぱらとめくってみると、
このホテルに訪れたカップルが記していく、日記帳のようなものだった。
この手のノートは以前にも何度か見たことがあったが、
大体が下世話で、ふざけた内容のものが多い。
例えば、お互いの職業欄に、社長と秘書、と書いてあったり。
嘘ではないのかもしれないが、他のページを見ても同じような職業ばかりで記されているので、
やはりこういうところのノートに素性が知れるようなことは書かないか、
と妙に納得したものだった。

それに、書くだけなら自由のこと。
それぞれの願望や夢が、あらわれているのかもしれなかった。


レオリオは、脱衣所のあるほうへ目を向けてみた。
シャワーの音がする。

ふと、笑みを口角に浮かべ、備え付けのペンをノートに走らせた。



名前欄には、LとC。
職業欄には、医者と看護婦、と。




「レオリオ、出たぞ、いいか、私が服を着るまでこっちには来るなよ」

「へいへい、っと」



レオリオはノートを閉じてもとの位置に戻すと、冷蔵庫から発泡酒を出し、テーブルに置いた。









fin.
20080930




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